- 美しい景色
- 嬉しかった瞬間
- 愛する人の笑顔
ずっと見ていたい。ずっと続けばいいのに。
そんな思いも空しく、時間が経てば変わっていき、やがて失われる。
そこに確かにあったはずなのに、何百年, 何千年と経てば、存在したことすら誰の記憶にも残っていないだろう。
自分が愛したものを、そのままの形で残したい。
それができないのなら、せめて存在したと、そこにあったと伝えたい。
そんな思いから私は筆をとった。
芸術は苦悩が尽きない
自分の思いを絵にできないのは苦痛だ。
何枚書いても納得できない。
自分が見たものを描きたいだけなのに表現しきれない。
あの色を、あの光を、あの笑顔を、あの感動を、どうやって表現したらいいのだろう。
そんな探求心から、多くの技法が生まれた。
世間はそれらの技術を「素晴らしい!」と評価してくれたが、私はあまり嬉しくなかった。
技術ではなく絵をみて欲しかったから。
「とはいえ、その見てほしい絵をまだ描けていないのだが……」
評価されていることをどこか疎ましく思ってしまうのは、私がひねくれているからだろうか。
芸術の気づきと模索
ある日、ふと考える。
べつに石ころを丸く書く必要はない。
あの硬さや冷たさが、伝わればいいんだ。
そう気づいて、表現の自由さに感動しつつ絶望してしまう。
自分は何を描けばいいのだろう。
自分が伝えたかったのは、あの感動だったのか、あの景色だったのか。
感動を伝えようとすれば、元の景色からかけ離れていく。
景色を伝えようとすれば、あの感動を表現しきれない。
悩みと葛藤の末、書き上げた一枚。
満足できるわけがなかった。
私はまた筆をとった
芸術は時間との闘い
- 美しい景色が変わっていく
- 鮮明だった記憶が薄れていく
- 人生が残り少なくなっていく
描きたいものを描けないまま、時間とともに多くのものを失っていく。
皮肉にも技術力は上がっていた。
今の自分があの日あの時に戻れたら、理想の絵が描けるかもしれない。
そんな、叶わない夢を見てしまう。
死ぬまでに、納得のいく絵を描きたいものだ。
……
終わらない芸術
最後の時を迎え、ひとり沢山の絵に囲まれて思う。
納得できる絵は描けなかったが、挑戦し続ける人生でよかった。
ただできることなら、この絵に残したいと思えた素敵な景色のひとつひとつを、誰かと一緒に見て過ごせばよかったと。
満足感と後悔の入り混じった今の思いを、絵にできないものかと考え、自嘲しながら目を閉じた。
芸術について語るつもりが
芸術について書こうと思ったら、画家の気持ちを考えすぎて「孤独な画家おじさん」になっていました。
いつの時代の誰だよって感じだけど(笑)
芸術に携わる人が、本当はどう思っているのか知りません。
こんなことを考えているんじゃないかなという、すべて私の妄想です。
そこだけはお間違えの無いようお願いします。
芸術に携わる方がいたら、どんなことを考えるのかぜひ聞いてみたい。
まぁ結局なにが言いたいかっていうと、芸術って奥が深くて大変そうだよねって話。
おしまい